【リハ】言語聴覚士以外でも失語症を評価できる方法が発見された件

 

どうも皆さん、らいんほーです。

記念すべき一発目の投稿はやはりリハビリテーションの内容にしようかと思います。

 

今回はタイトルの通り、高次脳機能障害の一つに分類される失語症の話について面白い文献を読んだので紹介したいと思います。

 

私自身は理学療法士ですが、常々歩行機能の向上を促す際に高次脳機能や上肢機能が問題になり、歩くことは上手になったけど他の問題のせいで自立した生活を得ることができなかった人達を目にしてきましたし、らいんほーもその壁に悩むことも多くあります。

 

高次脳機能に関しては特に、早めに気がつく事ができれば、それに対応したプログラムを集中させ機能改善させることが出来る場合があります。

 

今回はそんな失語症のサインを見逃さないために、言語聴覚士以外の人でも、「あれ、この人もしかして失語症じゃ……」と疑うことができる方法が見つかったよ!という内容になります。

(今回は失語症で統一していますが、厳密には運動性失語の話になります。)

 

読んだ文献は2018年に藤田保健衛生大学が出した、「リハビリテーション病院で軽度失語症者を見過ごさないための方法」になります。

 

脳卒中33人を対象にした研究で、SLTAが満点であることが条件になっています。

SLTAっていうのは標準失語症検査の略で、うちの現場でもよく使用されている一般的な評価尺度です。この辺は長くなるので割愛します。

 

対象者は全員左大脳半球の一側病変で、脳出血脳梗塞をそれぞれ呈しています。

要するに脳卒中で重度の失語はないが、病巣と日常会話からちょっと疑わしい人達を注目したわけですね。

 

この対象者達を更に失語症群と非失語群に分けた状態で、SLTAの他に①MMSE②RCPM③FAB④AVLT⑤WFT

5つの評価を同時に実施し、有意な差が出なかったかを確かめたようです。

5つの評価は記銘力や見当識前頭葉機能をそれぞれ見ており、能力の低下と失語の関係を検討しています。その結果は、

 

①MMSE(有意差なし)

 軽度の失語症では難易度が低かった

②RCPM(有意差なし)

 視覚性課題のため失語症でも問題なかった

③FAB(有意差あり)

 語想起課題でいずれも引っ掛かっていた

④AVLT(有意差なし)

 話す直前に検者が読み上げる刺激があるた 

 め、純粋な発語ではなかった

⑤WFT(有意差あり)

 想起→発語の検査であり、差が生じていた

 

という結果になったそうです。個人的にはAVLTで有意差が出なかったのが興味深いですね。

 

そしてこの結果から、特に軽度の失語症であってもWFTでは低下を示すことを重要視しています。

 

WFTは正確には、

①CFT:1分間に動物、果物、乗り物を可能な限り想起する

②LFT:1分間に「し」「い」「れ」から始まる語を想起する

テストに分かれており、その答えた数を得点にする検査になっています。

今回の研究では失語群はどちらも有意差が出ています。

 

つまり、軽度の失語症ではSLTAのような大がかりな失語検査では引っ掛からないが、語想起自体は機能低下しているためWFTのような前刺激がない発話は苦手になっていることがわかります。

 

検査内容自体も非常に楽ですし、時間も機材も必要ないためST以外でも簡易的に軽度失語症をチェックすることができるわけですね。

 

そんな研究のご紹介でした。

要約すると、

左半球の脳卒中患者に対して、WFTを使えば日常では気付きにくい失語症を確認することができる!

ということですね。いやーこれは便利。

 

トップダウン風に捉えれば、患者様同士の会話やセラピストとの会話中になんだかもどかしさやイライラしている様子の人を見掛けたら試してみると、QOLの向上やリハビリへの集中に繋がってくるのではないでしょうか?

 

それではまた次回の記事でお会いしましょう。

質問、意見あればコメントでお伝え下さい。